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起業

起業のフレームワークを、一人で使える形に噛み砕くリーンキャンバス/ビジネスモデルキャンバス/SWOT

2026年9月16日公開 / ハコブネ編集部

AIの津波に飲み込まれるか、ハコブネに乗るか。

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公開 2026年9月16日/最終更新 2026年9月16日 | 監修:池田 龍一(株式会社Walkers 取締役) | 読了 約8分

起業のフレームワークを、一人で使える形に噛み砕く

起業のフレームワークは、社内の新規事業向けに説明されていることが多く、そのまま一人で使うと、埋められない枠ばかりが残ります。フレームワークは、事業を説明するための書式ではなく、次に何を調べるかを決めるための道具です。一人で使うなら、全部を埋めることより、空いた枠を宿題として取り出せるかどうかのほうが大事になります。この記事では、リーンキャンバス・ビジネスモデルキャンバス・SWOTの3つを、個人の起業で使える形に噛み砕き、埋める順番と、埋まらないときの対処まで整理します。

この記事について

書いているのは、作る側です。ハコブネを運営する株式会社Walkersは、受託と自社事業で累計300件の開発に関わり、200社以上の事業づくりを支援してきました。監修は取締役の池田龍一です。

一般論ではなく、実際にやったことの中身で説明します。この記事に出てくる数字は、すべて公開済みの自社・支援先の事例から引いています。出典は記事の最後にまとめました。

一人で使うときは、「説明のため」から「判断のため」に用途を変える

組織の中でフレームワークが使われるとき、その目的の多くは合意形成です。関わる人が多いほど、同じ絵を見て話す必要があるからです。一人の起業には、その相手がいません。

そのため、一人で使うときは目的を入れ替えます。埋めるのは人に見せるためではなく、自分がどこを勘で書いているかを、自分に見せるためです。勘で書いた枠が、そのまま次に確かめることになります。

もうひとつ、個人で使うときの前提があります。それは、手持ちから始めるという前提です。つかさ(渡邊敦司)は、手持ちの資源から始めるエフェクチュエーションの考え方が自分の起業プロセスに近い、と公開のXで書いています。理想の事業から逆算して足りないものを数えるのではなく、いま持っているもので何が作れるかを起点にすると、枠の埋まり方が変わります。

リーンキャンバス:最初に置くのはこれ

一人の起業で最初に書くなら、リーンキャンバスが向いています。課題と顧客から始まり、確かめる順番と相性がいいからです。ただし、個人で使うときは扱いが軽くなる枠があります。

  • 課題/顧客セグメント:いちばん時間をかける。ここが曖昧だと、他の枠は全部想像になります
  • 独自の価値提案:一文で書く。書けないなら、顧客の理解がまだ足りていません
  • ソリューション:最初は箇条書き3つで十分。作り込むのはあとです
  • チャネル:一人なら「いま自分が届けられる相手」から書く。理想の販路は後回し
  • 収益の流れ/コスト構造:金額まで入れる。桁を間違えると設計ごと変わります
  • 主要指標:1つに絞る。見る数字が複数あると、判断が鈍ります
  • 圧倒的な優位性:個人の場合、最初は空欄で構いません

個人のリーンキャンバスは、9枠のうち「課題・顧客・価値提案・主要指標」の4つが通っていれば、動き出せます。残りは動きながら埋まります。

主要指標を1つに絞る例として、ハッカソンで運営が作った記録アプリBENLOGがあります。確かめる仮説は「うんちを育てるためなら、人は毎日トイレを記録するのか」の一点で、合格ラインは7日後の継続率40%・30日後20%・1日平均3.5件でした。この数字は検証前に置いた目標値で、実測ではありませんが、見る数字と合格ラインを先に書いておくと、結果を見たあとで基準が動かなくなります。

ビジネスモデルキャンバス:人を巻き込む段になってから

ビジネスモデルキャンバスは、パートナー・リソース・主要活動といった「誰とどう回すか」の枠が手厚いフレームワークです。一人で始めた直後は、これらの枠がほとんど自分ひとりで埋まってしまい、書く意味が薄くなります。

使いどころは、外の人が入ってくる段です。外注を使う、代理店を通す、他社と組む、といった話が出てきたときに書くと、抜けが見つかります。

  • キーパートナー:誰がいないと回らないか。ここが1社しかないなら、それが事業のリスクです
  • 主要リソース:自分の時間以外に何があるか。ここが空なら、事業は自分の稼働そのものです
  • 主要活動:毎週かならず発生する作業。ここが多すぎると、続きません
  • 顧客との関係:一度売って終わりか、継続か。継続なら維持の手間まで書く

サカチムプラスの例は、この枠の効き方がわかりやすい事例です。個人が運営する「サカチム」の有料版として、当初は検索サイトの強化を想定していましたが、対話を重ねる中で「チーム専用ホームページの質」に方向転換し、100種類の配色を実装しました。既存のサカチムには164チームが登録されています。何を主要活動に置くかが変わると、作るものも売り方も変わります。

SWOT:自分の資源を書き出すために使う

SWOTは、外部環境の分析として教わることが多いのですが、一人の起業で使うなら、強み(S)を書き出すためだけに使っても元が取れます。機会と脅威は、個人がいくら書いても精度が上がらないことが多いからです。

強みを書くときは、「できること」ではなく「他の人より説明がうまい領域」で探すと出てきます。毎月やらされている面倒な作業、他部署から毎回同じ質問が来る資料、人に聞かれると長く話せてしまう話題。強みは、市場から探すものではなく、自分の履歴から拾うものです。

弱みは、隠すためではなく、外に出す判断をするために書きます。Calmspot(クリスタルロード)の案件は、自社開発で見通しが立たなくなった状態から引き継いで開発し、当初予算200〜300万円から開発コストを50%以上削減できたと依頼者が話しています(3〜4ヶ月)。自分でやらないと決めるのも、事業の判断のひとつです。

埋める順番

一人で起業するときの順番は、次のように置くと詰まりにくくなります。

1. SWOTのSだけ書く(自分の手持ちを出す)

2. リーンキャンバスの課題・顧客を書く(誰の何を扱うか)

3. 価値提案を一文で書く(言えないなら2に戻る)

4. 主要指標を1つ決める(何が起きたら当たりか)

5. ソリューションを3行で書く(作る量はここで決める)

6. 収益とコストに金額を入れる(桁を合わせる)

7. 人を巻き込む段でビジネスモデルキャンバスに移す

ハコブネの新規事業立ち上げゼミ(3ヶ月・全6回・最大2名)も、現状整理→立ち上げる対象を1つに決める→コンセプト→顧客→MVPを作って動かす→改善→リリース→集客設計、という流れをとっています。つかさは、Who・When・What・Where・How・Whyを埋めると新規事業のコンセプトになる、とも書いています。順番の要点は、書く量ではなく、前の枠が通っていない状態で次に進まないことです。

埋まらないときの対処

枠が埋まらないのは、能力の問題ではなく、材料がない状態です。対処は枠ごとに決まっています。

  • 顧客が書けない:人に会う。会う相手が思いつかないなら、いま連絡先を知っている人から数える
  • 課題が書けない:自分が過去に金を払って解決した不便を書き出す
  • 価値提案が一文にならない:機能を並べているのが原因のことが多い。相手の状態が前後でどう変わるかで書き直す
  • 主要指標が決まらない:作ったものが使われている、と判断できる行動を1つ選ぶ
  • 金額が入らない:似た仕事の相場を3つ調べて、真ん中を仮で置く
  • 優位性が書けない:空欄のままでよい。動いた実績があとから入ります

埋まらない枠を無理に埋めた紙は、あとで自分を騙します。空欄のまま残し、「これは調べる」と印をつけておくほうが役に立ちます。ApoLink(UPSTA Japan)は、テストマーケでマッチング機能の反応が良かったため、開発途中で作る順番を組み替えて予定どおりリリースしました(開発2ヶ月半、リリース1ヶ月半で会員200人弱)。紙の上で正解を決め切るより、外に出して書き換えるほうが速いことがあります。

よくある質問5選

質問1フレームワークは3つとも書く必要がありますか。

ありません。一人で始めるなら、SWOTのSとリーンキャンバスで足ります。ビジネスモデルキャンバスは、外の人やお金が入ってくる段で書けば十分です。

質問2埋めた紙は誰かに見せるべきですか。

見せる相手がいるなら見せたほうが早く直ります。ハコブネではDiscordでのやりとりのほか、10分の個別メンタリングや定期報告会の場を用意しています。人に説明できない部分が、そのまま弱い部分です。

質問3一度書いたら、どのくらいの頻度で書き直しますか。

期間で決めるより、外で何かを確かめたタイミングで書き直すほうが自然です。顧客に会った、値段を出した、使われたか見た——そのつど該当する枠だけ直してください。

質問4事業計画書とは違うのですか。

目的が違います。事業計画書は資金調達や社内承認など、相手に説明するための書類です。ここで挙げたフレームワークは、自分が次に何を確かめるかを決めるための道具として扱っています。

質問5書いたとおりに進めれば成功しますか。

しません。フレームワークは、検討の抜けを減らし、判断を早くするためのものです。うまくいくかどうかは、外に出して確かめた回数と、そのあとの直し方に左右されます。

この記事について

池田 龍一

執筆:ハコブネ編集部 / 監修:池田 龍一

株式会社Walkers 取締役

池田は、ITとノーコードの事業開発・教育事業の立ち上げを経て2021年にWalkersを共同創業。100件以上のシステム開発に携わり、要件がまだ固まっていない案件や、他社から引き継いだ開発の立て直しを担当しています。

株式会社Walkersは、AI駆動開発・ノーコード開発のシステム開発会社です。累計開発実績300件、200社以上の支援、自社メディアの累計100万PV。受託開発と並行して、自社でも複数の新規事業を立ち上げています。

最終更新:2026年9月16日

作る前の「何を確かめるか」を、人と決める

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