この記事の内容
マッチングアプリの作り方を調べると、恋愛系のサービスを前提にした説明が多く出てきます。ただ、実際に個人や少人数で立ち上がっているものは、仕事・地域・趣味・BtoBのマッチングのほうが多いです。つなぐ相手が変わっても作り方の骨格は同じで、難しいのは開発ではなく、どちら側を先に集めるかの一点です。 この記事では、個人や少人数がマッチングのサービスを作るときの手順を、鶏と卵の順番、最初は人が手でつなぐ運用、必要な機能の最小構成、費用のかけどころ、法令面の確認先という順に書きます。恋愛系に限らず、モノ・場所・時間・仕事をつなぐ形にもそのまま当てはまる内容にしています。
この記事について
書いているのは、作る側です。ハコブネを運営する株式会社Walkersは、受託と自社事業で累計300件の開発に関わり、200社以上の事業づくりを支援してきました。監修は取締役の池田龍一です。
一般論ではなく、実際にやったことの中身で説明します。この記事に出てくる数字は、すべて公開済みの自社・支援先の事例から引いています。出典は記事の最後にまとめました。
最初に決めるのは、機能ではなく「どちら側を先に集めるか」
マッチングのサービスは、両側がそろわないと価値がゼロになります。出す側だけが100人いても、受ける側がいなければ何も起きません。逆も同じです。そして立ち上げの最初は、必ずどちらか片側だけしかいない状態から始まります。鶏と卵と呼ばれる状態で、マッチングを作るときにいちばん時間を取られるのはここです。
機能の話から入ると、この問題は永遠に解けません。検索を作っても、絞り込みを作っても、片側がいない事実は変わらないからです。最初に決めるのは画面の仕様ではなく、どちら側を先に集めて、その間もう片側をどうやって埋めるかです。
先に集める側は、次の4つを見比べて決めることが多いです。
- 困っている度合いが強い側(放っておくと損が出ている側)
- 数が少ない側(集めるのに時間がかかる側)
- お金を払うことに納得しやすい側
- 待たされても離れにくい側
このうち優先度が高いのは、数が少ない側です。多い側はあとから集められますが、少ない側は声をかけ続けないと集まりません。残材(使われずに残った材料)の流通をつなぐカウダムのような形なら、残材が出る側と、それを使いたい側のどちらが希少かで、先に走る方向が決まります。
そしてもう片側は、集まるまでのあいだ運営が代わりに埋めるのが現実的です。自分たちで在庫を持つ、知り合いに頼む、既に人が集まっている場に出向いて連れてくる。格好はよくありませんが、両側がそろわないと何も確かめられないので、最初の数十件はこの形で通すことが多いです。
「成立」を定義してから、まずは人が手でつなぐ
成立の定義を一文にする
先に集める側が決まったら、次に決めるのは成立の定義です。マッチングは、どこをもって「つながった」とするかで、作るものも測るものも変わります。
同じサービスでも、成立の置き方は何段階もあります。
- 相手が見つかって、連絡が始まった
- 条件が合って、日時や数量が決まった
- お金が動いた
- 実際に受け渡しや面談が終わって、双方が納得した
成立の定義が決まっていないサービスは、伸びているのか止まっているのかを誰も判定できません。 登録数は増えているのに何も起きていない、という状態が一番危険で、これは成立を見ていないから気づけません。
定義は、あとで厳しくする方向に動かすのが基本です。最初は「連絡が始まった」で置いて、件数が出てきたら「条件が決まった」に上げ、さらに「受け渡しが終わった」に上げる。逆に、最初から一番厳しい定義で置くと、数ヶ月ゼロが続いて判断材料が何も残りません。
日程調整と決済が一体になったビジネスマッチングのApoLinkは、サービスの形そのものが、連絡が始まっただけで終わらないように組まれています。つなぐところと、日時が決まるところと、お金が動くところが一続きになっているので、どこまで進んだかがそのまま記録に残ります。成立をどこに置くかは、機能の配置にまで効いてきます。
仕組みを作る前に、手でつないで確かめる
個人や少人数で始めるなら、最初はシステムを作らずに、運営が手でつなぐ形から入るのが早いです。フォームで条件を受け取って、表に並べて、目で突き合わせて、両者に連絡する。これだけで、マッチングが成立するかどうかは確かめられます。
手でつなぐ期間に分かることは、あとから設計をやり直さなくて済むものばかりです。
- 条件のどこで折り合わないのか(値段なのか、量なのか、場所なのか、日程なのか)
- 判断するのに足りない情報は何か(写真がないと決まらない、現物を見ないと決まらない、など)
- 成立までに何往復かかるのか
- 断られるときの理由は何か
手でつないだ回数が少ないうちに検索機能を作ると、誰も使わない絞り込みが並びます。 検索条件は想像で作るものではなく、手で突き合わせたときに毎回見ていた項目を、そのまま画面に移すものです。20件から30件ほど手でつなぐと、必要な項目はだいたい出そろうことが多いです。
手作業の期間は、直す間隔を短く保つのがコツです。カウダムは、毎週1時間の打ち合わせを重ねながら改善を積んでいて、2025年10月16日に廃棄削減量2,000kg突破が発表されています。週に1回という間隔だと、先週決めたことの結果を見てから次を決められるので、ずれが小さいうちに直せます。
手作業をやめる合図は、件数が増えて手が回らなくなったときです。手が回っているうちは、まだ作らなくていいという判断でかまいません。逆に、手でも成立しないものは、システムにしても成立しません。
機能の最小構成は5つ
手でつないだ結果、成立が起きることが確かめられたら、いよいよ作ります。最初のリリースに入れる機能は、次の5つで足りることが多いです。
- 登録(どちら側の人かが分かる。項目は最小限)
- 掲載(出す側が条件を書く欄。手作業のときに毎回聞いていた項目だけ)
- 見つける(全件の一覧と、絞り込み2つ程度。高機能な検索は後回し)
- 連絡(最初は外部の連絡手段に渡すだけでも成立する場合が多い)
- 成立の記録(誰と誰が、いつ、どの段階まで進んだか)
反対に、入れたくなるけれど最初は要らないことが多いのは、相互評価、おすすめ表示、通知の作り込み、プロフィールの充実度スコア、そしてネイティブアプリ化です。どれも「マッチングアプリならある機能」ですが、片側がまだ100人いない段階では効きません。最初のリリースに入れる機能は、成立の定義を測るために要るかどうかだけで決めます。
アプリという言葉に引っぱられて最初からスマホアプリを作ろうとすると、審査や配布の手間が増えて、直す速度が落ちます。スマホで使えるWebの形で出しておいて、成立が続くことが分かってからアプリ化を考える、という順番にしておくほうが、直しながら進めやすいです。
費用は「片側を集め続けること」に残しておく
マッチングの立ち上げで先に尽きるのは、多くの場合、開発費ではありません。マッチングで先に尽きるのは開発費ではなく、片側を集め続ける体力です。 作り終えたあとに、毎月誰かが声をかけ続けないと、片側は静かに減っていきます。
そのため、費用のかけどころは次の順で考えると崩れにくいです。
- 片側を集めるための動き(現場に足を運ぶ、既存の集まりに入る、声をかけ続ける)
- 成立を記録して見返せるようにすること
- お金が動く部分の安全(決済そのものを自前で作らない)
削っていいのは、デザインの作り込み、管理画面の完全装備、アプリ化、多機能な検索です。これらは成立が続くことが確かめられてからでも遅くありません。
期間の目安として、ひとつ事例を挙げます。ApoLinkは開発が2ヶ月半、リリースから1ヶ月半で会員200人弱という数字が公開されています。これは1社の事例で、扱うものや集める相手によって期間も人数も変わりますが、マッチングの立ち上げが年単位の話ではないことは分かります。数ヶ月で一度出して、そこから直すという進め方が現実的です。
本人確認・年齢確認・お金の預かりは、必ず専門家と所管の窓口に確認する
マッチングのサービスは、つなぐ相手と、お金の通し方によって、関わってくる制度が変わります。ここは記事で結論を出せる部分ではないので、確認すべき論点だけを挙げます。
- 誰と誰をつなぐか:面識のない個人同士を引き合わせる形は、制度上の位置づけが変わることがあります。年齢の確認や、事前の届出が要るかどうかは、対象と形態によって扱いが異なります。
- お金をどう通すか:当事者どうしが直接払う形と、運営がいったん預かって相手に渡す形とでは、必要な手当てが変わります。預かる形にする場合は特に、早い段階で確認が要ります。
- 個人情報の扱い:何を取得するのか、どこに保管するのか、誰に渡るのか。手作業でつないでいる段階でも同じです。
- 表示と規約:料金、解約の条件、禁止行為、トラブルが起きたときの責任の範囲。
この領域は、記事や一般論で判断せず、弁護士などの専門家と、所管の窓口に必ず確認してください。 制度は変わりますし、同じ機能でも運用の仕方によって扱いが変わることがあります。当てはまるかどうかは、自分のサービスの形を具体的に説明したうえで確認する以外に、確かめる方法がありません。
確認のタイミングは2回です。1回目は、サービスの形を決める段階。2回目は、出す直前。形が決まる前に聞くと答えようがなく、出したあとに聞くと作り直しになります。手でつないでいる段階でも、お金を預かる形にするなら前もって確認しておくほうが安全です。
つまずきどころ4つと、順番を組み替える判断
最後に、よく詰まる場所を4つ挙げます。
両側を同時に集めようとする。 いちばん多い型です。予算も時間も半分ずつになって、どちらも中途半端な数で止まります。先にどちらかへ寄せると決めるだけで、動きは速くなります。
登録数だけを見ている。 登録は増えるのに成立が出ない、という状態を放置してしまう型です。見る数字は、先に決めた成立の定義に合わせます。
手数料を取る場所が、成立より前にある。 連絡が始まった時点で課金すると、当事者が外で決着をつけて戻ってこなくなることがあります。取る場所は、成立の定義とセットで考えます。
手でつなぐのをやめる時期がずれる。 早すぎると使われない機能を作り、遅すぎると運営が動けなくなります。目安は、手が回らなくなったかどうかです。
そして、作る順番は途中で変えてかまいません。ApoLinkは、テストマーケでマッチング機能への反応が良いことが分かったため、開発の途中で作る順番を組み替え、それでも予定どおりリリースしています。順番を変える根拠は、思いつきではなく、外に当てて返ってきた反応です。 反応を見ずに順番を入れ替えると、ただ完成が遠のきます。
よくある質問5選
質問1恋愛系ではないマッチングでも、作り方は同じですか?
骨格は同じです。どちら側を先に集めるか、成立をどこに置くか、最初は手でつなぐか、という順番は、仕事・地域・趣味・BtoBのどれでも変わりません。違いが出るのは、確認が要る制度と、手数料を取る場所です。
質問2片側が集まらないまま、もう片側に声をかけてもいいですか?
声をかけること自体は問題ありませんが、来てもらったのに相手がいない状態が続くと、次に呼び戻すのが難しくなります。最初のうちは、運営が代わりに片側を埋めて、実際に成立するところまで見せられる状態を作ってから広げるほうが安全です。
質問3手でつなぐ期間は、どのくらいが目安ですか?
期間より件数で見るほうが判断しやすいです。条件のどこで折り合うかが毎回同じように見えてきて、聞く項目が固定されたら、そこが切り替えどきです。件数が少ないうちに切り替えると、画面の項目を想像で決めることになります。
質問4手数料は、どちら側から取るのがいいですか?
成立しないことによる痛みが大きい側から取るのが基本です。詳しくは、マッチングサービスの事例を型で整理した記事に、型ごとの取り方をまとめています。
質問5法令の確認は、どの段階で誰にすればいいですか?
サービスの形が決まった段階と、出す直前の2回を、弁護士などの専門家と所管の窓口に対して行ってください。この記事では論点の並べ方までしか書いていません。当てはまるかどうかは形態と運用によって変わるため、自分のサービスを具体的に説明したうえで確認する必要があります。
この記事で触れた事例の出典
最終更新:2026年9月16日
