この記事の内容
副業としてスモールビジネスを始めるとき、多くの人が最初に考えるのは「何をやるか」です。しかし実際に詰まるのは、何をやるかではなく、どう抱えるかのほうです。時間が読めない、断れない、本業との境目が曖昧になる、お金の記録が追いつかない。どれも中身の良し悪しとは関係なく起きます。この記事は、副業として始めるときの設計を、時間・本業との線引き・引き受けない仕事・お金の記録・本業に移すかの判断の順にまとめたものです。はじめに大事な前提をひとつ。税務と労務の扱いは、必ず税理士など専門家と勤務先にご確認ください。 この記事は判断の仕方だけを扱います。
この記事について
書いているのは、作る側です。ハコブネを運営する株式会社Walkersは、受託と自社事業で累計300件の開発に関わり、200社以上の事業づくりを支援してきました。監修は取締役の池田龍一です。
一般論ではなく、実際にやったことの中身で説明します。この記事に出てくる数字は、すべて公開済みの自社・支援先の事例から引いています。出典は記事の最後にまとめました。
副業でつまずくのは、中身より「抱え方」
副業は、本業という制約の中でやるものです。制約の中身は主に3つ、使える時間の総量、連絡が取れる時間帯、そして急な予定に潰される確率です。この3つを先に数えずに受けた仕事は、ほぼ必ず本業か睡眠のどちらかを削って処理することになります。
もうひとつ見落とされやすいのが、副業には「終わらせる責任」が付いてくることです。趣味なら途中でやめても誰も困りませんが、対価を受け取った瞬間から、相手の予定が自分に紐づきます。最初の1件を受ける前に、抱え方の設計を済ませておくほうが、あとから直すよりずっと楽です。
なお、就業規則の確認や許可・届出の手順、最初の1件の取り方については、会社員のまま始める手順の記事に分けて書いています。この記事は、その手前と、その先の「続け方の設計」に絞ります。
時間:使える時間ではなく、約束できる時間で決める
「平日夜に2時間、週末に3時間」と枠を決めるところまでは、多くの人がやります。落とし穴はその次です。枠の全部を仕事の約束に充てると、遅れを吸収する場所がなくなります。 体調、繁忙期、家族の予定は必ず来ます。
そこで、枠を2つに分けてください。約束に使う時間と、遅れを吸収する時間です。目安として、確保した枠のうち約束に充てるのは一部にとどめ、残りは何も入れずに空けておく。空いた週はそのまま前倒しに使えますし、飛んだ週は約束を守れます。
同時に、次の3つを先に決めて相手に伝えます。ここを曖昧にすると、副業の時間はいくらでも侵食されます。
- 同時に抱える件数の上限(1件か2件か)
- 連絡できる時間帯と、返信までの目安(平日日中は返せないことを先に言う)
- 打ち合わせを入れられる曜日と時間
伴走のような形は、月に数回の打ち合わせが中心になるため枠に収まりやすい部類です。ハコブネの新規事業立ち上げゼミも、3ヶ月・全6回・最大2名という形をとっています。回数と人数を先に決めておくと、抱え方が読めます。
本業との線引きは4本ある
副業と本業の境目は、感覚ではなく物理的に引きます。引く線は4本です。
時間の線:本業の勤務時間中に副業の作業や連絡をしない。休憩時間の扱いも会社ごとに異なるので、迷ったら勤務先に確認してください。
設備の線:社給のPC、社用のメールアドレス、社内のネットワーク、社内で契約しているツールは使わない。私物と私用アカウントで完結させます。
情報の線:顧客リスト、社内資料、開発物、取引条件は持ち出さない。規定の有無にかかわらず、ここは例外なしです。 業務で身についた「こういう場面で人は困る」という理解を使うことと、ファイルを持ち出すことはまったく違います。
人脈の線:勤務先の取引先にそのまま営業をかけない。競業にあたるかどうかの判断は自分ではできないので、迷う相手は最初から外すほうが安全です。
4本のうち、あとで問題になりやすいのは情報と人脈です。うまくいったときにこそ問題になるという性質があるので、始める前に線を引いておいてください。就業規則の解釈、競業避止義務の範囲は会社ごとに違い、改定もされます。勤務先の担当部署と、弁護士や社会保険労務士などの専門家に確認してください。
引き受けない仕事を、あらかじめ決めておく
断る基準は、依頼が来てから考えると必ず甘くなります。相手が目の前にいて、金額も提示されている場面では、誰でも受けたくなるからです。基準は、依頼が無いときに書いておくものです。
副業として無理が出やすいのは、次のような仕事です。自分の事情に合わせて足し引きしてください。
- 即応が前提の仕事:平日日中に連絡がつくことを求められるもの
- 常駐や立ち会いが要る仕事:場所と時間を押さえられるもの
- 範囲が決まっていない仕事:「とりあえず全部お願い」という形の依頼
- 勤務先の情報が無いと成立しない仕事:線引きが崩れる
- 値切りから始まる相談:価格の話が最初に来る関係は、たいてい後も続く
範囲を決める工夫は、断ることとセットで効きます。Walkers自社のHP Answerは、ヒアリングシートだけで打ち合わせ0回、48時間以内に初稿3パターンという形に範囲と手順を固定しています。渡すものと手順が決まっている仕事は、副業の枠に収まるかどうかを事前に判断できます。 逆に、範囲が決まっていない仕事は、何時間かかるか誰にもわかりません。
お金の記録と、確定申告という存在
副業で対価を受け取ると、税務上の手続きが関わってきます。金額の基準、所得の区分、申告が必要かどうかの判定は、状況によって変わり、制度も改まります。この記事では具体的な判定を書きません。必ず税理士など専門家にご確認ください。
判断の仕方として言えるのは、記録は最初の1件から取っておくほうが、あとで必ず楽になるということです。あとからまとめて思い出すのは、想像以上に時間がかかります。最低限そろえておくと後で困らないのは、次のようなものです。
- 入金の記録(いつ、誰から、いくら、何に対して)
- 支出の記録と、その領収書・請求書
- 事業用と私用の口座・クレジットカードを分けておくこと
- 相手とのやりとり(見積もり、依頼内容、納品の記録)
口座を分けるのは、税務のためだけではありません。副業がいくら残しているのかを、自分が把握できるようになるからです。売上だけを見ていると、経費と時間を引いた残りが見えず、安すぎる価格のまま続けてしまうことがあります。One Companyの例のように、利用が増えるほど費用が比例して増える契約を抱えていると、伸びても残らない形になります。副業は金額が小さいぶん、この比例に気づくのが遅れがちです。
副業のまま続けるか、本業に移すかの判断
移すかどうかを、売上の金額だけで決めるのはおすすめしません。金額は月によって振れますが、判断に効くのは「繰り返し来ているかどうか」のほうです。 見るべきは次の4つです。
1. 同じ相手から、続けて依頼が来ているか(単発の集まりではないか)
2. 自分が動いていない時間にも、問い合わせが発生しているか
3. 時間が足りなくて断った依頼が、実際にあるか
4. 固定費を増やさずに、いまの形のまま回っているか
4つのうち3つ以上が当てはまるなら、枠を広げる判断の材料はそろっています。逆に、断った依頼が一度も無いなら、まだ枠は足りているということです。足りている状態で辞めると、収入が途切れたうえに、埋める仕事も無い状態から始めることになります。
判断に迷うときは、同じ立場の人の話を聞く機会を作るのが早道です。ハコブネでは月1〜2回・1回60〜90分のランチ会を開いていて、2026年9月4日の回は7名、うち2名はメンバー以外(事業開発が本職の人と、社内新規事業の担当者)でした。1DAY新規事業立ち上げイベントは会員の参加費が無料、一般は3,000円で、次回は2026年9月19日と10月18日です。辞めるかどうかの前に、人に説明してみるだけでも判断材料は増えます。
よくある質問5選
質問1確定申告は必要ですか。
必要かどうかは所得の額や種類、給与の状況などによって変わり、制度も改まります。この記事では判定を示しません。税理士など専門家、および所轄の税務署にご確認ください。 判定がどうであれ、入出金の記録を最初から残しておくことは無駄になりません。
質問2勤務先に申請が必要かどうかわかりません。
就業規則の副業規定を自分の目で読んだうえで、勤務先の担当部署に確認してください。許可制・届出制・禁止のどれかで手順がまったく違います。隠す前提で始めると、屋号も請求書も出しにくくなり、事業として続けにくくなります。
質問3週にどのくらいの時間が必要ですか。
一概には言えません。大事なのは総量より、枠を先に決めて、そのうち約束に充てる分と遅れを吸収する分を分けておくことです。枠を全部埋めると、1週間飛んだだけで約束が守れなくなります。
質問4価格はどう決めればいいですか。
副業だからと安くしすぎると、値上げのときに必ず揉めます。安くするより、範囲を狭く切って(この作業だけ、1ヶ月だけ)受けるほうが後を引きません。時間あたりで自分が何を渡しているのかを、先に言葉にしておいてください。
質問5法人を作るべきですか。
取引先の与信や税務の事情で必要になる場合もありますが、依頼が繰り返し来る状態になる前に急ぐ必然性は薄いことが多いです。設立・税務・社会保険の判断は個別事情で変わるため、税理士など専門家にご確認ください。
この記事で触れた事例の出典
最終更新:2026年9月16日
