この記事の内容
ホームページ制作の見積もりを出したら、取引先から「AIで作れば安くなるんじゃないですか」と聞かれた。そんな経験がある制作者は多いはずです。実際、AIに構成案や文章の下書きを頼むと数分で返ってきますし、コードもかなりの部分を書いてくれます。
一方で、AIが作ったものをそのまま公開できる案件はまだ多くありません。何を載せるかを決め、取引先の言葉を聞き、公開後に数字を見て直す仕事は、今も制作者の手元に残っています。
この記事では、ホームページ制作のどの作業がAIで短くなり、どの仕事が残るのかを分けて整理します。そのうえで、制作者が受託を続けながら持てる自社サービスの型と、最初の一歩を紹介します。ホームページ制作の仕事はすぐにはなくなりませんが、時間を売る形のままでいるより、今のうちに自分の商品を1つ持っておくほうが安全です。
この記事について
書いているのは、作る側です。ハコブネを運営する株式会社Walkersは、受託と自社事業で累計300件の開発に関わり、200社以上の事業づくりを支援してきました。監修は取締役の池田龍一です。
一般論ではなく、実際にやったことの中身で説明します。この記事に出てくる数字は、すべて公開済みの自社・支援先の事例から引いています。出典は記事の最後にまとめました。
ホームページ制作でAIが短くする作業

まず、AIで短くなる作業を具体的に挙げます。ホームページ制作を工程に分けると、AIが得意な作業ははっきりしています。
構成案と文章の初稿づくり
ヒアリングした内容をAIに渡すと、サイトマップの案、各ページの見出し、本文の下書きがすぐに出てきます。これまで時間をかけていた初稿づくりは、AIの案を確認して手直しする作業が中心になりつつあります。会社概要、アクセス、お問い合わせ、プライバシーポリシーのような定型ページは、とくに短くなります。
デザインのたたき台とコーディング
配色やレイアウトの案を何パターンも出す作業も、AIで速くなりました。HTMLとCSSのコーディング、レスポンシブ対応の調整、フォームの実装なども、AIに下書きを書かせて制作者が確認する進め方が広がっています。
修正対応と細かな更新
「この文言を変えたい」「写真を差し替えたい」「お知らせを1件追加したい」といった小さな更新も、AIを使えば短い時間で済む場面が増えています。保守契約の中で毎月発生していた細かな作業の手間は、今後さらに小さくなっていく可能性があります。
こうした作業は、これまで制作費の中で大きな部分を占めてきました。作業時間で見積もる受託は、その時間が短くなるぶん単価が下がりやすくなります。ホームページ制作が丸ごとなくなるというより、作業時間に値段をつけるやり方が通りにくくなる、と考えるほうが実態に近いです。
AIが入っても制作者に残る仕事

では、何が残るのでしょうか。現場で取引先とやり取りしていると、AIに任せにくい仕事がいくつも見えてきます。
何を載せるかを決める仕事
取引先の多くは「ホームページを新しくしたい」とは言えても、「誰に何を伝えて、どう動いてほしいか」までは言葉にできていません。制作者はヒアリングの中で、強みを聞き出し、載せる情報の優先順位をつけています。AIは材料があれば文章を整えてくれますが、材料を引き出す仕事は人が担っています。
取引先の事情をくむ仕事
社内の承認の流れ、社長と担当者の意見の違い、業界の慣習、予算の事情。こうした事情をくんで、通る提案に落とし込むのは制作者の経験です。納期が迫ったときにどこを削るかを取引先と決めるのも、人の判断です。
公開後に数字を見て直す仕事
公開して終わりではなく、問い合わせが来ているか、どのページが読まれているかを見て直す仕事も残ります。ここは取引先との関係が長く続くほど価値が出る部分です。
受託開発の側から見た同じ話は、受託開発の将来性|AIで何が減り、何が残るかを開発会社の現場からで整理しています。
残る仕事も時間を売る形のままになりやすい
残る仕事があるなら、受託のままでよいのではと思うかもしれません。ただ、残る仕事にも弱点があります。
1つ目は、残る仕事も結局は時間を売る形だということです。ヒアリングや改善提案の価値が上がっても、自分が動ける時間の上限は変わりません。繁忙期に新しい依頼を断れば、その分の売上はそこで止まります。
2つ目は、取引先側もAIを使い始めることです。小さな更新や簡単なページ追加を、取引先の担当者が自分でAIを使って済ませるようになれば、保守の依頼は減りやすくなります。
ハコブネを運営する株式会社Walkersも、受託開発を続けてきた会社として「受託開発という事業領域は、AIで将来的に消えていく可能性が高い」という問題意識を持っています。だからこそ、受託がまだ回っている今のうちに、自分の時間と切り離して売れる商品を1つ持っておくことをすすめています。受託をやめる必要はありません。受託で得た経験と取引先は、自社サービスの材料になります。
制作者が持てる自社サービスの3つの型

ホームページ制作者が受託の延長で作りやすい自社サービスは、大きく3つの型に分けられます。それぞれの始め方と受託を続けながら進める順番は、Web制作の受託から抜け出す方法|テンプレート・保守・SaaSの3つの道で詳しく扱っています。ここでは、AIとの関係に絞って見ていきます。
テンプレートを商品にする型
これまで何度も作ってきた構成を、テンプレートとして売る型です。AIで初稿づくりが速くなった今、テンプレートの価値は見た目よりも「この業種ならこの構成で、この順番で情報を載せる」という判断の部分に移っています。構成の考え方と、ヒアリングシートをセットにすると、制作者の経験が商品に入ります。
保守・運用を月額の定型サービスにする型
更新作業、数字の確認、改善提案を、決まった内容と月額でまとめる型です。作業そのものはAIで短くなるので、作業量ではなく「毎月何を見て、何を報告するか」を商品にします。作業時間が減れば、1人で受け持てる取引先の数を増やしやすくなります。
業種を絞ったサービスにする型
美容室、士業、工務店のように業種を1つに絞り、その業種に必要なページ、文言、機能をあらかじめ用意しておく型です。何度も同じ業種の依頼を受けてきた制作者ほど、この型を作りやすくなります。業種の事情を知っていること自体が、AIには持ちにくい強みです。
型を選ぶ前に確かめる2つのこと
1つ目は、その型を買ってくれる人が手元の取引先の中にいるかどうかです。テンプレートなら同じ業種の取引先、保守の定型サービスなら毎月更新を頼んでくる取引先が、最初のお客さんの候補になります。候補が1社も思い浮かばない型は、最初の1本には向きません。
2つ目は、AIで作業が短くなったあとも、その商品に制作者の判断が残るかどうかです。見た目のパターンだけを並べたテンプレートは、取引先がAIで同じものを作れるようになると値段がつきにくくなります。どの順番で何を載せるか、毎月何を見て何を直すか、という判断が入っている商品ほど、値段を保ちやすくなります。
3つの型に共通するのは、作業ではなく、制作者がこれまで受託で積んできた判断を商品にしている点です。
AIで初稿を作る自社サービスの例

AIを前提にした自社サービスの例として、Walkersが提供しているHP Answerを紹介します。
HP Answerは、サブスク型のAIホームページ制作サービスです。依頼者はヒアリングシートに答えるだけで、打ち合わせは0回。AIが構成・デザイン・実装まで行い、48時間以内に動く初稿を3パターン提示する仕組みになっています。現在はベータ版として案内しています。
この例から制作者が読み取れることは2つあります。1つは、ヒアリングシートの設計がサービスの中心になっている点です。打ち合わせをしない代わりに、何を聞けばよいサイトになるかをシートに落とし込んでいます。これは、受託でヒアリングを重ねてきた人ほど作りやすい部分です。
もう1つは、初稿を早く複数出すことで、依頼者が「動くもの」を見ながら決められる点です。ハコブネ式の原則の1つ「動くもので聞く」と同じ考え方で、言葉だけで要望を聞くより、見せてから反応を聞くほうが話が早く進みます。
なお、HP Answerの利用社数などは公開されていないため、ここでは仕組みの考え方だけを参考にしてください。同じ仕組みを個人の制作者がそのまま作る必要はありません。たとえば、自分が得意な業種向けのヒアリングシートと、AIで初稿を作る手順を組み合わせ、「初稿まで定額」の小さなサービスにするところから始められます。
受託の経験を自社サービスに変える手順

ここからは、受託を続けながら自社サービスを1つ形にする手順を4つに分けて紹介します。
依頼の履歴から種を探す
過去の見積書や請求書、取引先とのメールを見返し、何度も頼まれた作業を書き出します。同じ業種の依頼が続いている、同じ種類の修正を毎月頼まれている、といった繰り返しは、お金を払う人がいる証拠です。種の見つけ方と判定の仕方は、受託で何度も頼まれる作業は、プロダクトの種になる|見つけ方と3つの判定で整理しています。
週の枠を先に押さえる
受託が忙しいと、自社サービスの作業はいつも後回しになります。週4時間など、自社のための時間を先にカレンダーに入れてしまいます。AIで受託の作業を短くした分を、この枠に回すのが現実的です。
既存の取引先に有料モニターを頼む
試作ができたら、まず付き合いのある取引先に見せます。受託の延長として「こういう形も作ってみたので、試しに使ってもらえませんか」と提案し、少額でも料金をいただく有料モニターとして使ってもらいます。無料で配るより、払う価値があるかどうかが分かります。提案の切り出し方は、既存顧客に自社サービスを提案する方法|受託の関係を壊さない切り出し方で扱っています。
失ってよい時間とお金を先に決める
始める前に、どこまでやって反応がなければ止めるかを決めておきます。作ったテンプレートやヒアリングシートは、売れなかったとしても受託の提案や実績に回収できます。上限を決めておけば、受託の売上を守りながら大胆に試せます。
よくある質問5選

質問1ホームページ制作の仕事は、AIで本当になくなりますか?
すぐになくなる可能性は高くありません。ただ、初稿づくりや定型ページ、細かな更新のような作業は短くなり、作業時間で見積もる受託は単価が下がりやすくなります。
質問2AIで作れるなら、取引先は自分で作るようになりませんか?
簡単な更新やページ追加は、取引先が自分で済ませるようになる場面が増えると考えられます。何を載せるかを決める仕事や、公開後に数字を見て直す仕事は、制作者に頼む理由として残りやすい部分です。
質問3自社サービスを作るのに、プログラミングの深い知識は必要ですか?
テンプレートや保守の定型サービスであれば、今のホームページ制作の技術で始められます。AIを使えば、試作に必要なコードもかなりの部分を書いてもらえます。
質問4受託をやめないと自社サービスは作れませんか?
やめる必要はありません。受託を続けながら週の枠を先に押さえ、既存の取引先に有料モニターを頼む進め方なら、売上を保ったまま始められます。
質問5どの型から始めればよいか迷っています。
過去の依頼の履歴を見て、いちばん繰り返し頼まれている作業に近い型を選ぶのがおすすめです。同じ業種が多ければ業種特化、毎月の更新が多ければ保守の定型サービスから始めると、最初のお客さんを見つけやすくなります。
依頼の履歴を見返すところから始める
まずは、ここ1年の見積書とメールを見返し、何度も頼まれた作業を書き出してください。そのリストの中に、テンプレート、保守、業種特化のどれかにつながる種があるはずです。受託で積んできたヒアリングと判断の経験は、自社サービスを作るときに間違いなくプラスに働きます。
ハコブネは、受託と自社の新規事業を並行してきた株式会社Walkersが運営する、受託業者のためのAI×事業開発コミュニティです。種の見つけ方から有料モニターの集め方まで、受託を続けながら自社サービスを出す進め方を一緒に考えています。入会を前提にしない無料相談会もオンラインで開いていますので、自分の受託のどこに種があるかを話してみたい方は気軽にご参加ください。
この記事で触れた事例の出典
最終更新:2026年10月21日
