この記事の内容
YouTubeの長尺、企業の採用動画、ショート動画の切り出しなど、動画編集の受託で毎月の売上を立てている人は多いと思います。最近は編集ソフトにAIの機能が入り、無音部分を自動で詰めたり、話した内容から字幕を起こしたりする作業の手間が小さくなってきました。便利になった一方で、動画編集の仕事はAIで減るのではないか、と考える人も増えています。
この記事では、動画編集の仕事のうちAIで短くなりやすい作業と、編集者の手に残りやすい仕事を分けて整理します。そのうえで、編集の受託で身につけた経験から作れる自社プロダクトの例を、テンプレート・素材・ツール・講座の4つに分けて紹介します。
結論を先に書くと、動画編集という仕事がまるごと無くなるわけではありません。ただ、ハコブネでは、作業時間で請求している部分は将来的に縮んでいく可能性が高いと考えています。作業の値段が下がる前に、受託で積んだ経験を自分の商品に変えておくのが、いちばん無理のない備え方です。
この記事について
書いているのは、作る側です。ハコブネを運営する株式会社Walkersは、受託と自社事業で累計300件の開発に関わり、200社以上の事業づくりを支援してきました。監修は取締役の池田龍一です。
一般論ではなく、実際にやったことの中身で説明します。この記事に出てくる数字は、すべて公開済みの自社・支援先の事例から引いています。出典は記事の最後にまとめました。
AIで短くなりやすい動画編集の作業

まず、どの作業が短くなりやすいかを具体的に見ていきます。ここで挙げる作業は、どれも「手順が決まっていて、正解がある程度はっきりしている」作業です。
無音カットと言い直しの削除
トーク動画の編集で最初にやる無音カットは、AIの機能で短くなりやすい作業の1つです。音声の波形や文字起こしをもとに、間延びした沈黙や「えー」「あのー」を候補として拾う機能が出てきています。編集者の作業は、候補を確認して、残す間と切る間を選ぶことが中心になりつつあります。
言い直しの削除も同じです。文字起こしの画面で重複した言い回しを探して消せば、タイムライン上の対応する部分も一緒に消える機能が増えています。
字幕の書き起こしとテロップの下書き
字幕の書き起こしは、以前は動画の長さに比例して時間がかかる作業でした。今は音声認識で下書きを作り、固有名詞や専門用語の誤りを直す作業が中心になりつつあります。テロップの文言の下書きや、要点の抜き出しもAIに任せやすい作業です。
縦型の切り出しと書き出しの量産
横長の動画から縦型のショートを切り出す作業も短くなっています。話者の顔を追いかけて画角を自動で合わせたり、盛り上がった部分の候補を出したりする機能も出てきています。サイズ違いの書き出しを何本も作る作業も、設定を一度決めておけば機械に任せやすくなります。
AIが入っても編集者の手に残る仕事

作業が短くなっても、動画を仕上げる責任は編集者に残ります。取引先が編集者にお金を払う理由は、作業の時間ではなく「この動画で何を伝えるか」を決めて形にしてくれることにあるからです。
構成を決めて、素材を捨てる判断
1時間の収録から10分の動画を作るとき、どこを使ってどこを捨てるかは、AIの候補を見ても最後は人が決めます。視聴者が途中で離れない順番に並べ替える判断や、話の山をどこに置くかの判断は、取引先の目的を知っている人が担う部分が大きい判断です。
取引先の意図を聞き取る力と、修正のやり取り
「もう少しテンポよく」「ブランドの雰囲気に合わせて」といった修正依頼は、言葉どおりに受け取ると外れることがあります。過去の動画や取引先の発言から、本当に直したい点を読み取るのは、何度も修正のやり取りをしてきた編集者の強みです。
AIで短くなるのは手を動かす作業で、何を残して何を捨てるかを決める仕事は編集者に残ります。
納期と品質の責任を持つこと
取引先にとっては、決まった日に、決まった品質の動画が届くこと自体に価値があります。繁忙期に何本も並行して納めてきた段取りの経験は、AIの機能が増えても置き換わりにくい部分です。
作業時間で請求する受託は縮みやすい

ここまでを踏まえると、動画編集の受託のうち縮みやすいのは「作業時間で値段が決まる部分」です。無音カットや字幕の書き起こしに何時間かかったかで見積もりを出していると、作業が短くなるほど請求できる額も小さくなります。
取引先の側も、AIの機能が入った編集ソフトを触るようになっています。簡単なカット編集は社内で済ませ、外に出すのは構成や仕上げだけ、という頼み方に変わる取引先もあるでしょう。こうした変化は一度に起きるのではなく、見積もりの値下げ交渉や、依頼の範囲が少しずつ狭くなる形で表れやすいと考えられます。
だからこそ、受託が回っている今のうちに、作業時間とは別の形で売れる商品を持っておく意味があります。受託をやめる必要はありません。受託で何度も頼まれてきた作業や、取引先から繰り返し聞かれた質問は、そのまま自社プロダクトの材料になります。受託の依頼の中から商品の種を探す方法は、受託で何度も頼まれる作業は、プロダクトの種になるで整理しています。
動画編集者が作れる自社プロダクトの例

ここからは、編集者が受託の経験から作りやすい自社プロダクトを4つの型で紹介します。どれも、受託で培った技術と、取引先とのやり取りで分かった困りごとを材料にしています。
テンプレート
1つ目は、編集のテンプレートです。テロップの型、オープニングとエンディング、場面転換、サムネイルのレイアウトなどをまとめて、編集ソフトで使える形で販売します。受託で同じ業種の動画を何本も作っている人なら、その業種でよく使う型がすでに手元にあるはずです。
テンプレートを作るときは「誰の、どんな動画のためか」を絞るほうが売りやすくなります。たとえば、士業の解説動画向け、店舗の紹介ショート向け、のように用途を限定すると、買う人が自分に合うかどうかを判断しやすくなります。
素材
2つ目は、素材です。効果音、BGM、アイコン、背景、手書き風の装飾など、編集で繰り返し使う部品をまとめて提供します。受託で「この素材を探すのに毎回時間がかかる」と感じていたものは、ほかの編集者も同じように探している可能性があります。
素材を販売する場合は、使っている部品の出どころと利用条件を必ず確認してください。受託で作った素材を転用する場合は、取引先との契約で権利がどちらにあるかも確かめる必要があります。判断に迷う点は弁護士など専門家に相談してください。
ツール
3つ目は、編集の手間を減らす小さなツールです。字幕ファイルの表記ゆれを直すツール、納品前の確認項目を自動でチェックするツール、取引先からの修正指示を一覧にまとめるツールなど、編集者自身が「これがあれば楽になる」と思った作業が候補になります。
最近はAIを使うことで、プログラミングに慣れていない人でも小さなツールを動かすところまで作れる場面が増えています。まずは自分の受託で使ってみて、時間が短くなるかを確かめてから、ほかの編集者や取引先に見せるのが安全な順番です。
講座
4つ目は、講座です。ここで言う講座は、編集を仕事にしたい人向けだけではありません。社内で動画を作り始めた取引先の担当者に向けて、撮影の段取りや、外注する範囲の決め方を教える講座も考えられます。
取引先が簡単な編集を社内で済ませるようになるなら、その担当者に教える側に回る、という発想です。受託で何度も説明してきた内容をまとめれば、講座の目次はそのまま作れます。
商品を選ぶときに確かめる3つのこと

4つの型のどれを選ぶかは、思いつきではなく受託の記録から決めるほうが進めやすくなります。次の3つを確かめると、作ってから売れないという事態を減らせます。
- 同じ依頼や質問を、複数の取引先から受けたことがあるか
- その困りごとに、相手がすでにお金や時間を払っているか
- 自分の受託の作業にも使えて、売れなくても無駄にならないか
3つ目は、ハコブネ式の「売れなくても沈まない」という考え方です。作ったテンプレートやツールが商品として売れなかったとしても、自分の受託で使えば作業時間が短くなり、提案の材料にもなります。受託に回収できる商品から始めれば、失敗しても失うものは小さく抑えられます。
受託を続けながら最初の1本を出す手順

自社プロダクトは、受託を止めてから始めるものではありません。受託の売上を保ったまま、小さく出して反応を見るのが現実的です。
週の枠を先に押さえる
最初にやるのは、自社の作業時間を週の予定に先に入れることです。繁忙期でも動かさない枠として、たとえば週4時間を確保します。AIで無音カットや字幕の作業が短くなった分を、この枠に回すと考えると取りやすくなります。時間の作り方は、受託が忙しくて自社サービスが進まない人の時間管理術で詳しく書いています。
動くものを見せて、既存の取引先に聞く
テンプレートやツールは、説明するより動くものを見せたほうが反応が正確に分かります。最初に見せる相手は、すでに付き合いのある取引先が向いています。受託の納品のついでに「こういうものを作ってみたのですが、使えそうですか」と聞けば、関係を崩さずに意見をもらえます。切り出し方の具体例は、既存顧客に自社サービスを提案する方法にまとめています。
有料モニターで実績を作る
反応がよければ、正規の価格より下げた有料モニターとして使ってもらいます。無料にしないのは、お金を払ってでも使いたいかを確かめるためです。モニターの声と使われ方を記録しておけば、正規リリースのときの説明材料になります。集め方と価格の決め方は、有料モニターの集め方と価格の決め方で整理しています。
最初のお客さんは、新しく探すより、今の取引先の中から見つけるほうが早く見つかりやすくなります。
よくある質問5選

質問1動画編集の仕事は、AIで本当に無くなるのですか?
動画編集という仕事がまるごと無くなる、とは考えていません。無音カットや字幕の書き起こしのような作業は短くなりやすい一方で、構成を決める判断や取引先との調整は編集者に残りやすい仕事です。ただし、作業時間で請求している部分は縮んでいく可能性が高いと見ています。
質問2AIの機能を使うと、取引先に値下げを求められませんか?
作業時間で見積もっていると、短くなった分の値下げを求められやすくなります。見積もりの項目を作業時間ではなく、構成の提案や修正対応の回数など、取引先が受け取る結果で示す方法を検討してください。浮いた時間は自社プロダクトの枠に回せます。
質問3編集しかしてこなかったのですが、ツールを作れますか?
小さなツールなら、AIを使ってプログラミングに慣れていない人でも動くところまで作れる場面が増えています。まずは自分の受託の作業で使う前提で作り、時間が短くなるかを確かめてください。ほかの人に売るかどうかは、その後に決めれば十分です。
質問4受託で作ったテンプレートを販売してもよいですか?
取引先との契約で、成果物の権利がどちらにあるかによって変わります。取引先のロゴや素材が入ったものはそのまま使えません。契約書を確認し、判断に迷う場合は弁護士など専門家に相談してください。
質問5受託と自社プロダクトの時間配分はどのくらいが目安ですか?
最初は受託がほぼ100%のままで構いません。有料モニターの段階で受託を9割程度、正規リリース後に5〜7割と、自社の売上に合わせて少しずつ比率を変えるのが一つの目安です。生活費と固定費が自社の売上でまかなえるまでは、受託を急に減らさないほうが安全です。
受託の記録を見返して、最初の1本を決める
まずは、この半年に受けた編集の依頼と、取引先から聞かれた質問を書き出してみてください。同じ依頼が繰り返し出てくるところに、テンプレート・素材・ツール・講座のどれかの種があります。そのうえで週の枠を押さえ、動くものを1つ作って、今の取引先に見せるところまでを最初の目標にします。収入の作り方や単価の考え方をもう少し詳しく知りたい人は、動画編集のフリーランスが受託以外の収入を作る方法も参考にしてください。
ハコブネは、受託と自社の新規事業を並行してきた株式会社Walkersが運営する、受託業者のためのAI×事業開発コミュニティです。受託の経験を材料に自社プロダクトを1本出すまでを、Discordでの相談やオンライン交流会、東京での対面イベントで一緒に進めています。入会を前提にしない無料相談会もオンラインで開いていますので、何から始めるか迷っている人は気軽に申し込んでください。
この記事で触れた事例の出典
最終更新:2026年10月21日
