COLUMN

受託からの事業化

受託から自社プロダクトへ移る方法受託を続けながら1本出すまでの7工程

2026年10月21日公開 / ハコブネ編集部

AIの津波に飲み込まれるか、ハコブネに乗るか。

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公開 2026年10月21日/最終更新 2026年10月21日 | 監修:池田 龍一(株式会社Walkers 取締役) | 読了 約12分

受託から自社プロダクトへ移る方法

受託の仕事は回っていて、取引先からの依頼も途切れていません。それでも、見積もりを出すたびに「この作業は、来年も同じ値段で頼まれるだろうか」と考えることはないでしょうか。AIで実装や制作の作業が速くなると、時間を売る受託の値段は下がりやすいからです。

かといって、受託をやめて自社サービスに全部を賭けるのは現実的ではありません。売上が立つまでの生活費も、取引先との関係もあります。多くの受託業者に必要なのは、受託を続けながら自社のプロダクトを1本出す手順です。

この記事では、受託から自社プロダクトへ移るまでを7つの工程に分けて説明します。各工程で何をして、どこまで進んだら次へ行くかを書いています。受託の経験は、自社プロダクトを作るときに間違いなくプラスに働きます。

この記事について

書いているのは、作る側です。ハコブネを運営する株式会社Walkersは、受託と自社事業で累計300件の開発に関わり、200社以上の事業づくりを支援してきました。監修は取締役の池田龍一です。

一般論ではなく、実際にやったことの中身で説明します。この記事に出てくる数字は、すべて公開済みの自社・支援先の事例から引いています。出典は記事の最後にまとめました。

受託の仕事がこの先減りやすい理由

作業時間だけを売る受託は縮みやすい

受託の多くは、作業にかかる時間に値段をつけて売る商売です。見積もりの根拠は「何人で何日かかるか」で、取引先もその数字を見て発注を決めます。AIで同じ作業が半分の時間で終わるようになれば、取引先は作業時間の分だけ安くなることを期待しやすくなります。

株式会社Walkersの代表は、受託開発という事業領域はAIで将来的に消えていく可能性が高いという問題意識を持っています。Walkersは累計開発実績300件、200社以上の支援、自社メディアの累計100万PVという実績を持つ開発会社で、受託の当事者として出している見方です。全部の受託がすぐになくなるわけではありません。ただ、作業時間だけを売る受託は、少しずつ縮んでいく可能性が高いと考えておくほうが安全です。

受託開発でこの先何が減り、何が残るかは、受託開発の将来性|AIで何が減り、何が残るかを開発会社の現場からで詳しく整理しています。

受託の経験が自社プロダクトで効く4つの場面

受託の経験が効く4つの場面

受託から自社プロダクトへ移るのは簡単ではありません。受託では取引先が「何を作るか」を決めてくれますが、自社プロダクトでは自分で決め、自分で売る必要があります。それでも、受託で積んだ経験は次の4つの場面で効きます。

1つ目は作る力です。仕様を形にし、納期までに動くものを出す経験は、試作の段階でそのまま使えます。2つ目は取引先との接点です。既に信頼関係がある相手に「こういうものを試しに作った」と見せられるのは、ゼロから顧客を探す人にはない強みです。

3つ目は、何度も頼まれた作業の記録です。複数の取引先から同じ種類の依頼が来ているなら、それは需要があることの証拠になります。4つ目は要件を聞く力です。相手の話から本当に困っている点を聞き出す力は、自社プロダクトの顧客と話すときにもそのまま使えます。

一方で、受託の経験だけでは足りない部分もあります。値段を自分で決めること、まだ頼まれていない相手に売ること、作ったあとも使われ続けるように面倒を見ることです。7つの工程は、受託の経験で進められる部分を先に使い、足りない部分を少しずつ補う順番で並べています。

工程1〜3:時間をつくり、種を選び、動く試作を作る

時間をつくり、種を選び、試作する

最初の3工程は、受託の売上を落とさずに準備を進める段階です。受託の比率はほぼ100%のままで構いません。

工程1:自社のための時間を先に押さえる

受託が忙しい人ほど、空いた時間で自社のことをやろうとして進みません。先に週4時間などの枠をカレンダーに入れ、そこには受託の作業を入れないと決めます。枠をつくる手段は、AIで受託の作業を短くする、案件を選ぶ・値上げする、手が回らない案件を仲間と回し合う、などがあります。

時間の作り方は、受託が忙しくて自社サービスが進まない人の時間管理術|週4時間を先に確保するで詳しく扱っています。同時に、この取り組みで失ってよい時間とお金の上限も決めておきます。上限が先にあると、途中で迷ったときに続けるかやめるかを判断しやすくなります。

工程2:受託の依頼履歴から種を選ぶ

自社プロダクトの種は、新しく考え出すより、受託の依頼履歴から探すほうが当たりやすいです。過去1〜2年の見積もりや請求書を並べ、何度も頼まれた作業、取引先が毎回同じことで困っていた場面を書き出します。

書き出した候補を種にしてよいかの判定は、受託で何度も頼まれる作業は、プロダクトの種になる|見つけ方と3つの判定にまとめています。この工程では候補を1つに絞るところまで進めます。

工程3:説明資料より先に、動く試作を作る

候補が決まったら、企画書より先に動く試作を作ります。話だけで「こういうサービスはどうですか」と聞いても、相手は社交辞令で「いいですね」と答えがちです。触れるものを見せると、どこで手が止まるか、何が足りないかが具体的に返ってきます。

ハコブネが2026年8月に開いたハッカソンでは、4時間のイベントで参加者全員がプロダクトを完成させて発表し、5本が生まれました。開発がまったく初めての参加者が作った企業向けのPoC設計ツールが受賞しています。AIを使えば、試作は確かめたいことを1つに絞れば短い時間で形になります。確かめる点の絞り方は、個人開発のMVPの作り方|何を確かめるか決めてから、機能を削るが参考になります。

工程4〜5:既存顧客と有料モニター、リリース前の点検

有料モニターを募り、出す前に点検

試作ができたら、お金を払ってくれる人がいるかを確かめます。ここから受託の比率は9割くらいになるのが目安です。

工程4:既存顧客に見せて、有料モニターを募る

最初に見せる相手は、今の取引先です。打ち合わせの最後に「別件で、こういうものを試作しています」と見せる程度で十分です。受託の延長として、取引先の業務に合わせた試作を提案する形にすると、相手も受け取りやすくなります。

反応がよい相手には、正規の価格より安い有料モニターとして使ってもらいます。無料で配ると、使わなくても困らないので本当の反応が分かりません。少額でもお金を払ってもらうことで、相手が本気で使うかどうかが分かります。取引先だけでなく交流会で会った人に声をかけるのも有効です。

見せた相手に断られても、受託の関係はそのまま続けて構いません。断られた理由は、価格、使う場面、今の業務とのずれのどれだったかを書き留めておきます。同じ理由で断られることが続いたら、試作を直すか、見せる相手を変える合図です。

募集の仕方と価格の決め方は、有料モニターの集め方と価格の決め方|正規リリース前に実績を作るで整理しています。

工程5:事業・技術・契約・運用の4つを点検する

有料モニターで手応えがあっても、そのまま正規リリースに進むと後で困ることがあります。リリース前に、事業・技術・契約・運用の4つを点検します。

事業では価格と売り方、技術ではAPIキーの管理やAIのAPI利用料の上限、契約では利用規約と特定商取引法の表記、運用では問い合わせ窓口とバックアップを確かめます。受託の成果物の一部を使う場合は、取引先との契約で権利がどうなっているかも確認が必要です。表記や権利の判断は弁護士など専門家に確認してください。項目の一覧はAIで作ったプロダクトをリリースする前のチェックリスト|事業・技術・契約・運用にあります。

工程6〜7:正規リリースと、受託の比率の見直し

正規リリース後に受託の比率を見直す

点検が済んだら、有料モニターの実績をもとに正規リリースします。ここからは受託の比率を少しずつ変える段階です。

工程6:モニターの実績を使って正規リリースする

正規リリースでは、有料モニターの声と使われ方を販売ページや提案資料に入れます。「何社が使って、どんな作業がどう変わったか」を自分の言葉で書けると、知らない相手にも説明しやすくなります。モニターの段階で値段を上げてもよいか、どこまで面倒を見るかも、この時点で決め直します。

この段階の受託の比率は5〜7割が目安です。受託の売上で生活と会社の固定費をまかないながら、自社プロダクトの売上を少しずつ積みます。

正規リリースの直後は、問い合わせや不具合の対応で受託の作業時間が削られやすくなります。リリースの時期は、受託の繁忙期を避けて決めておくと、どちらの品質も落とさずに済みます。

工程7:受託の比率を、自社の売上を見て決める

受託をどこまで減らすかは、気分ではなく自社プロダクトの売上で決めます。自社の売上が続けて立つまでは、受託を減らさないほうが安全です。受託の比率が5割以下になるのは、自社プロダクトの売上が安定してからで構いません。

受託を減らすときは、全部を一度に減らすのではなく、時間あたりの単価が低い案件や、自社プロダクトと関係のない作業から手放していきます。自社プロダクトと同じ業界の取引先は、新しい機能の相談相手や紹介元になることもあるので、関係を残しておく価値があります。

ここで挙げた比率は、あくまで目安です。受託→受託+有料モニター→正規リリース→自社プロダクトという4段階の考え方は、脱受託はいきなり目指さない|受託→有料モニター→正規リリースの4段階で詳しく説明しています。

また、自社プロダクトが思うように売れなくても、作ったものは受託の提案や実績、次の案件の部品として使えます。売れなくても受託の側に回収できる形で作っておけば、挑戦しても沈みません。

よくある質問5選

よくある質問5選

質問1受託をやめてから自社プロダクトに集中したほうが早くないですか?

受託をやめると、売上が立つまでの生活費と固定費を貯金でまかなうことになります。焦って値付けや売り先を決めると判断を誤りやすいので、受託を続けながら進めるほうが、落ち着いて判断できる分、遠回りになりにくいと考えます。

質問2週4時間で本当に進みますか?

確かめたいことを1つに絞れば、週4時間でも試作と顧客への聞き取りは進みます。大事なのは時間の長さより、その枠に受託の作業を入れないことです。

質問3既存の取引先に自社の試作を見せると、関係が悪くなりませんか?

受託の延長として「御社のこの作業を短くできないか試作してみた」と見せれば、営業されたとは受け取られにくいです。断られても受託の仕事はそのまま続ける、と最初に伝えておくと安心してもらえます。

質問4受託で作ったものを自社プロダクトに使ってもよいですか?

契約の内容によります。権利の帰属や秘密保持、再利用の範囲を契約書で確認し、判断に迷う場合は弁護士など専門家に相談してください。取引先との合意があれば使える場合もあります。

質問5プログラミングができない受託業者でも自社プロダクトを作れますか?

作れます。ハコブネのハッカソンでは、開発がまったく初めての参加者が作ったツールが受賞しました。動画編集やライティングの受託でも、テンプレートや講座、小さなツールなど、自分の作業を形にしたプロダクトは考えられます。

今週は依頼履歴の書き出しと、週4時間の枠から始める

7つの工程のうち、今週できるのは工程1と工程2の入口です。カレンダーに週4時間の枠を入れ、過去の見積もりと請求書から何度も頼まれた作業を10個書き出してください。それだけで、次に何を作るかの候補が見えてきます。

ハコブネは、受託と自社の新規事業を並行してきた株式会社Walkersが運営する、AI×事業開発のコミュニティです。受託を続けながら自社プロダクトを1本出す進め方を、オンライン交流会や対面のイベントで仲間と一緒に試せます。入会を前提にしない無料相談会も開いているので、自分の受託のどこに種がありそうか、まずは話しに来てください。

この記事について

池田 龍一

執筆:ハコブネ編集部 / 監修:池田 龍一

株式会社Walkers 取締役

池田は、ITとノーコードの事業開発・教育事業の立ち上げを経て2021年にWalkersを共同創業。100件以上のシステム開発に携わり、要件がまだ固まっていない案件や、他社から引き継いだ開発の立て直しを担当しています。

株式会社Walkersは、AI駆動開発・ノーコード開発のシステム開発会社です。累計開発実績300件、200社以上の支援、自社メディアの累計100万PV。受託開発と並行して、自社でも複数の新規事業を立ち上げています。

最終更新:2026年10月21日

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